●大手への人材流出に苦しむ中小の派遣会社
――大手と中小で明暗が分かれている理由はなんでしょうか。
箕輪陽介氏(以下、箕輪)小規模事業者には2つの問題点があります。ひとつ目は、派遣スタッフが足りないこと。いい人材は大手が獲得してしまうため、スタッフ不足でビジネスが成立しなくなっています。2つ目は社員自体が不足していること。企業への営業活動や派遣スタッフの管理を行うためには一定の人材が必要ですが、その人材を確保できていないことが小規模事業者の大きな課題となっています。
――近年の派遣会社の倒産にはどのような特徴がありますか。
箕輪 石川県のプレミア・ジャパンは地元を中心に中堅規模に成長しましたが、リーマン・ショック後に経営が悪化し、中核社員の転職などもあって営業力が低下、17年いっぱいで事業停止となりました。静岡県の齊藤商事は主に工事現場への人材派遣を行っていましたが、同様に業績悪化で18年5月31日までに事業停止しています。大分県の日本ソフト工業はピーク時に約1000名の派遣社員を抱え、売上高は35億円を計上していました。しかし、東日本大震災で東北地方の工場が打撃を受けたことで受注が激減。13年には得意先が事業を縮小したため資金繰りが悪化し、17年3月に大分地裁に破産申請を行いました。派遣会社は人材がすべてなので、派遣スタッフや社員などの人材が流出してしまうと事業継続は難しくなります。この構図は物流業界も同じです。トラックなどのドライバーは条件のいいところに移っていき、人手不足に苦しむ運送会社が増えています。大手の派遣会社は福利厚生が手厚く、スキル向上などのサポート体制もしっかりしています。一方で、小規模事業者は派遣スタッフの囲い込みにコストをかけられません。人材の流動性が高まっていることで、必然的に小規模事業者には苦しい状況となっています。派遣業界に限らず、「攻勢に出る大手、消耗戦を強いられる中小」という構図は共通しています。
――人手不足の一方で、メガバンクなどの金融機関はリストラを続けていますね。
箕輪メガバンクではAI(人工知能)などを利用して人材の3割程度をカットし、省力化していくのがトレンドになっています。その3割の人材がどこに流れていくのかが問題ですね。今は、AIなどの技術革新によって少ない人材でビジネスを回す時代への過渡期といえます。
●改正派遣法で「派遣切り」「雇い止め」の危惧も
――特に地方の人手不足が深刻化していますが、地方の派遣会社の動向はどうですか。
箕輪 地方の場合、派遣先がほぼ固定されているケースが多いのですが、その派遣先が業績悪化したり事業所を閉鎖したりすると、派遣会社のほうも行き詰まってしまいます。そのため、地方の派遣会社の倒産も多いです。たとえば、前述した日本ソフト工業は精密機械メーカーのカメラファインダーの組立・加工などの業務に人材を派遣していましたが、派遣先業種の不況の影響を受けてしまいました。生産ラインを機械化するメーカーも多いため、今後も同様のケースは起きるかもしれません。
――15年9月に施行された改正労働者派遣法では、派遣社員の無期雇用への転換などの措置が設けられていますが、影響は出ていますか。
箕輪効果や弊害が顕在化するのは、これからでしょう。派遣社員が正規雇用になりやすくなることで、派遣会社とすれば新たな派遣スタッフを確保しなければならないため、困惑していることは確かです。また、本来は改正派遣法は派遣社員の処遇向上を推進するためのものですが、派遣先の「派遣切り」や「雇い止め」なども危惧されています。これらについても、引き続き注視していく必要があるでしょう。
(構成=長井雄一朗/ライター)
2019年4月9日 07:00 0
ラベル:倒産

